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新潟地方裁判所長岡支部 昭和43年(ワ)111号 判決 1969年11月07日

主文

被告等は、連帯して、原告小林栄蔵に対し金七〇万円及びこれに対する昭和四三年六月一二日から、原告近藤寅一に対し金二二〇万円及びこれに対する同年同月九日から、原告朴仁湊に対し金一二〇万円及びこれに対する同年同月二三日から、各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告等の負担とする。

この判決の第一項は、被告浅野寛に対しては無条件で、その余の被告等に対しては、それぞれ原告等が各執行金額の五分の一に相当する担保を供するときは、仮に執行することができる。

事実

一、当事者の求める裁判

原告等訴訟代理人

主文一、二項同旨の判決及び仮執行宣言

被告橋本忠、同松崎昭十四、同堀孝等訴訟代理人

原告等の各請求を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。

二、請求原因

(一)訴外株式会社マルゼン(以下訴外会社という)は、昭和四一年七月六日設立されたが、被告等はその発起人であり、かつ、同会社設立後は、被告浅野寛はその代表取締役、同橋本忠、同松崎昭十四はその取締役、同堀孝はその監査役の各地位にあるものである(以下被告等につき名は省略する)。

(二)(1)原告小林栄蔵は、振出人訴外会社、訴外稲庭準受取、同人から訴外長岡重機株式会社へ、同会社から同原告へと順次裏書記載のある別紙第一記載の約束手形を所持しており、支払期日に支払場所へ呈示したが支払を拒絶された。

(2)原告近藤寅一は、振出人、受取人、各裏書人いずれも右(1)に同じの記載がある別紙第二記載の約束手形を所持しており、支払期日に支払場所へ呈示したが支払を拒絶された。

(3)原告朴仁湊は、振出人訴外会社、訴外稲庭準受取、同人から同原告への裏書記載のある別紙第三の約束手形を所持している。

(4)ところで、訴外会社は昭和四二年一一月頃いわゆる倒産したため、原告等は右各手形金の支払を受けることができなくなり、原告等は右手形金に相当する損害を蒙つた。

(三)(1)ところで、代表取締役たる被告浅野は取締役会も招集せず、株主総会を開催せず、計算書類も作成せず、独断的に業務を運営し会社の業績資産状態を悪化させ、同様に取締役である被告橋本、同松崎も取締役会も招集せず株主総会も開催せず、計算書類の作成もせず、かつ代表取締役の業務執行に対する監視、監督義務を懈怠し、監査役である被告堀はその職務である監査を全くなさずその職務を懈怠した。右被告等の行為は、故意又は重大な過失による職務の懈怠であり、それにより訴外会社は前記(一)のように倒産するに至つたものであるからそのため原告等が蒙つた損害を連帯して賠償すべき義務がある。

(2)仮にそうでないとしても、訴外会社については、前記のように昭和四一年七月六日設立登記の手続がなされており、被告等はその発起人であるが、被告等は、右設立手続において、出資者より資本の払込みを受けることなく、いわゆる見せ金により払込保管証明書を得た(現実の行為は被告浅野が担当)ほか、創立総会を開催しないのにその議事録を作成する等して、設立登記手続をし(現実の設立登記手続は被告堀が担当)、その設立を終えたものである。発起人である被告等の右行為は、故意又は少くとも重大な過失により会社設立についての職務を懈怠したものである。従つて、そのようにして設立された結果訴外会社は資本の充実が充分でなく前記のように倒産するに至つたものであるから、被告等は発起人として、連帯して右に因つて生じた原告等の損害を賠償すべき義務がある。

(3)仮にそうでないとしても、被告等は、前記(1)のように資本充実が充分でない訴外会社を設立するときは、やがて同訴外会社と取引関係に立つ者に損害を加えるに至るであろうことを予見すべきなのに不注意により予見せず、前記(1)の行為をなし、原告等に前記損害を与えたものである。従つて、被告等は共同の不法行為者として、連帯して前記(1)と同様に損害賠償すべき義務がある。

(4)仮にそうでないとしても、訴外会社は、従前被告浅野が個人でなしていた電気器具の修理、販売、電気工事の請負等の営業を名目のみ株式会社にするため、他の被告等の名義を借りて株式会社設立の手続をしたもので、法人格は形骸にすぎず、かつそれは法人制度の濫用にほかならないから、訴外会社の法人格は否認されるべきである。そして、そのような場合には民法債権編の組合の規定を準用すべきであり、被告等は組合員として原告の蒙つた前記損害を賠償すべき義務を負う。

(四)よつて、被告等は連帯して、原告小林栄蔵に対し金七〇万円及びこれに対する訴状送達の翌日である昭和四三年六月一二日から、原告近藤寅一に対し金二二〇万円及びこれに対する訴状送達の翌日である同年同月九日から、原告朴仁湊に対し金一二〇万円及びこれに対する訴状送達の翌日である同年同月二三日から、各支払済まで民法所定年五分の割合による金員の支払を求める。

三、被告橋本、同松崎、同堀等訴訟代理人の答弁

請求原因(一)の事実は認める。同(二)の(1)ないし(4)の事実は不知。同(三)の(1)の事実中、被告浅野が訴外会社の代表取締役に、同橋本、同松崎がその取締役に、同堀がその監査役に各就任したこと、取締役会株主総会が開催されず、計算書類が正規に作成されなかつたことは認めるが、その余の点は争う。被告橋本、同松崎は取締役会の構成員としてのみ会社の意思決定に加わるにすぎす、また取締役会の決議を通じてのみ他の取締役を監督しうるにすぎないから、仮に被告浅野の独断的営業により原告主張の損害が生じたとしても、被告浅野の行為は取締役会の決議に基く業務執行ではないから被告橋本、同松崎は右により生じた損害を賠償すべき義務はない。また、監査役である被告堀の度重なる督促にもかかわらず、訴外会社の代表取締役は正規の計算書類を作成せず、また作成しうる資料の提供もしないため、被告堀は監査役としての職務を行使することが不可能であつた。そのため被告堀は昭和四三年五月一〇日監査役の辞任届を会社宛郵送したほどである。従つて、同被告には故意はもとより重大な過失もない。同(三)の(2)の事実中、被告等が訴外会社の発起人であつたことは認めるが、その余の点は争う。同(3)の事実は争う。同(三)の(4)同(四)の事実は争う。

四、証拠(省略)

別紙

第一目録

<省略>

第二目録

<省略>

第三目録

<省略>

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